When I am seventeen.

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Oct 18
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 いつもどおりの時間、ふつうならバイトからの帰り道に通るあの場所。
 乾ききったコンクリートの駅前。
 空からは珍しい、秋の小雨が降り注ぐ。
 傘を差すほどでもない、たおやかな雨。
 薄汚れたベンチが濡れて、てらてらと光る。
 そのなかで彼女は唄っている。
 なにかを研鑽するように。
 なにかを叙情するように。
 なにかを演繹するように。
 おれは抱えた荷物に邪魔されながら、ポケットから金色の硬貨を取り出す。
 彼女は――。
 あまりにも美しかった。
 歌声は――。
 あまりにも素晴らしかった。
 そして、
 そして彼女は、
 誰からも顧みられなかった。
 誰からも存在を認められなかった。
 ああ。
 皆が急いた足取りで我が道を行く。
 まるで行き着く先に、これより素晴らしい物があるんだとでも言わんばかりに。
 おれは、唐突に叫び出したい衝動に駆られた。
 ここに素晴らしいなにかがある、そう叫びたかった。
 金脈を探し当てた炭鉱夫のように。
 埋蔵金を見つけた冒険家のように。
 海底に船を見たダイバーのように。
 ここに滅茶苦茶スッゲーもんがあるぞおぉ!
 そう伝えてやりたかった。
 奴らの目を覚ましてやりたかった。
 おれは泣いたかもしれない。
 雨が伝ったのかもしれない。
 しかし確かに、おれの胸の内には。
 得体の知れないものが蠢いていた。
 それは太陽の中心より熱かった。
 それは月の裏側より冷たかった。
 そしてなにより、
 彼女の声がそれを助長していた。
 ……やがて唄い終えた彼女は、
 あろうことか微笑んで、
 ギターを傍らに置いた。
 そして、まるで有り合わせたように。
 カッターを懐から取り出して、自らの首筋に当てた。
 誰も、
 おれの他には誰も、気づかなかった。
 目の前の可憐な女の子の、死よりも。
 大切な事柄があるんだとでも、言わんばかりに。
 蒙昧な愚衆は歩き去っていった。
 
 
 彼女の手が――。
 動く。
 
 
 おれの弾いたコインを、受け止めるために。
 
 
「お嬢さん!」
 おれは近付きながら、ほとんど叫ぶような声量で、それでもクールな言葉を放った。
「きみの死は、おれのリクエストじゃあない!」